
吉川和人さん インタビュー / 1
吉川和人 展
2018年10月12日(金)〜21日(日)
今回の個展を前に、作品への思いを聞きに工房へ伺った。
出入り口は大きく開かれ、高い天井についている小窓からは光が差し込む。
そこには今から姿を変える様々な種類の木材や機器、道具が静かに構えていた。
作品制作において、吉川さんに工程を教えてもらった。
まず、木を切断してから水分を抜いていく。
乾燥させるのに厚さ1寸で1年といわれているそうだ。
また、木の外側は水分量が多く、収縮率が高いので歪みが発生しやすい。
その歪みを見極め、型取りをするが、時には予想以上に割れが入り作品にならないものも。
生きているものなので仕方ない。その後、カンナで削り整えていく。

手の痕跡と木の割れをのこすため1点物は刃で削っていく。
木が生きていた事実を残したい。
作品制作に必須のカンナやハンマーのグリップは手に馴染むものをご自身で取り付けている



会社員から木工作家へ。
大学在学中ブランドビジネスに興味を持ち、卒業後は美しいプロダクトに定評ある会社で12年勤務。
企画へ移動すると職人やものづくりを生業とする方達と会う機会が増え、次第に自分も何かを作って売りたい気持ちが強くなっていったという。2011年の東日本大震災をきっかけに、やりたいことをやろうと決意。林業や建築、木工など木に関することが幅広く学べる岐阜県立森林文化アカデミーへ。
「木に関わると、無理なことはしないんですよね。流れに沿うと刃もスムーズに動かしやすい、でもちょっと違うと無理に力が入るし、進まない。何事も人間のエゴで進めてはいけないと改めて思います。」
家族で渡仏した経験も。
「木の質感、朽ちていく様を良いとする文化は勉強になった」日本を離れてみて見方が変わったという。
フランスでは家具は自分で直してしまうブリコラージュが一般的。パリのアパートではシンクが木だったため少しカビが生えてしまい、帰国の際に修繕しようと削り化学塗料を塗って仕上げると、オーナーに「変わっていく様がいいのに!」と怒られてしまったエピソードを話してくれた。
日本だと、ここはこうではいけないという決まりが根強くあるが、海外では自分が良いと思ったものを良いとする人たちが多い。そういった環境で養われた柔軟性は、節も入り皮も「生」の証と作品へ昇華させる吉川さんの作風に影響を与えている。

→インタビュー2へ